僕が絵本『てとて』をつくった理由。
それを一言で説明するのは、意外と難しいです。
「絵本作家になりたかったから」
というのとも、少し違います。
最初にあったのは、
子どもたちに何を残せるだろう。
という気持ちでした。
目次
絵本をつくることから始まったわけではなかった
僕は、もともと美術大学を出たわけでも、小さい頃から画家を目指していたわけでもありません。
30歳になってから本格的に絵を描き始めました。
当時は消防官として働きながら、家では父親として子どもたちと過ごす毎日。
その中で、
「我が子に、そのままで素敵なんだよ。」
と伝えたいと強く思うようになりました。
お金や物ではなく、もっと先まで残るもの。
そこで少しずつ形になっていったのが、絵と物語でした。
『てとて』で描きたかったもの
タイトルにした「てとて」。

手と手がつながる。
すごく単純なことです。
でも僕は、この単純なことの中に大切なものがたくさんあると思っています。
誰かに助けてもらう。
誰かを助ける。
一緒に笑う。
喧嘩する。
仲直りする。
一人ではできなかったことが、誰かとならできる。
僕自身、仕事でも家族でも、いろいろな人とのつながりに助けられてきました。
だから子どもたちにも、
「一人で全部やらなくていいんだよ」
ということを伝えたかったんだと思います。
子どもに「教える」絵本にはしたくなかった
絵本をつくるときに意識していたことがあります。
それは、
「こうしなさい」
と教える本にはしたくないということ。
大人から子どもへ正解を渡すのではなく、
物語を読んだあとに、
「自分だったらどうするかな」
と少し考えてもらえる。
そんな余白を残したかった。
子どもによって感じることが違ってもいい。
大人が読んで違うことを感じてもいい。
僕は、それが絵本の面白さだと思っています。

制作場所は、アトリエではなく電車だった
『てとて』をつくっていた頃、僕には毎日何時間も絵を描ける環境があったわけではありません。
仕事もある。
家族との時間もある。
だから、使ったのが移動時間でした。
iPadを持って電車に乗り、
少し描く。
保存する。
また次の移動で続きを描く。
10分の日もあれば、もう少し描ける日もありました。
そういう小さな時間を積み重ねて、一冊の形にしていきました。
今振り返ると、
「時間ができたらやる」ではなく「今ある時間でやる」
という考え方を覚えたのも、『てとて』をつくった経験からだったと思います。
一冊完成して、終わりではなかった
『てとて』が完成したとき、もちろん嬉しかったです。
でも僕にとって大きかったのは、その後でした。
絵本を読んでくれる人がいる。
子どもたちに読み聞かせをする。
作品を見てもらう。
そこから人と出会う。
そして、また新しい仕事や作品につながっていく。
「人とのつながり」を描いた絵本が、実際に僕自身をいろいろな人とつないでくれました。
これは、つくり始めたときには想像していなかったことです。
絵本から、今のheyへ
今は絵本だけではなく、原画、オーダーアート、企業の物語、地域イベントなど、活動の幅も少しずつ広がっています。
一見すると、それぞれ違う仕事に見えます。
でも僕の中では、全部つながっています。
誰かの想いを聞く。
そこにある物語を見つける。
絵にする。
そして、別の誰かへ届ける。
だから今のheyが大切にしているのは、
「想いを、物語に。」
ということです。
その原点のひとつが、僕にとって『てとて』です。

子どもたちが大人になったとき
僕の子どもたちも、いつか大人になります。
そのとき『てとて』を読んでくれるかは分かりません。
本棚の奥にあるかもしれないし、存在すら忘れているかもしれません。
それでもいいと思っています。
いつかふと見つけて、
「お父さん、こんなこと考えてたんだな」
と思ってくれたら、それだけで十分です。
絵や絵本は、今いる人だけではなく、
未来の誰かにも言葉を残せるもの。
僕が絵本をつくるようになって、そのことを強く感じるようになりました。
まとめ|『てとて』から始まったもの
『てとて』をつくったことで、僕の人生は少しずつ変わっていきました。
でも、最初から画家になる未来が見えていたわけではありません。
子どもたちに何かを残したい。
その小さな気持ちから始まりました。
だから、今何かを始めたいと思っている人にも、
最初から大きな答えは必要ないと思っています。
一枚描いてみる。
一行書いてみる。
誰かに話してみる。
その小さな一歩から、思ってもいなかった物語が始まることがあります。
僕にとって、その始まりの一冊が『てとて』でした。
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